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村元健一《漢魏晋南北朝時代の都城と陵墓の研究》出版

村元健一 中古史研究資訊 2020-09-05

著者:村元 健一

シリーズ:汲古叢書

出版年月日:2016/08/20

ISBN9784762960345

判型ページ数:A5584ページ

定価:本体14,000円+税

 

【主要目次】

 

序 章

 

第一篇 漢の都城と陵墓

第一章 前漢長安の変容

第二章 前漢皇帝陵の再検討―陵邑、陪葬の変遷を中心に―

第三章 前漢諸侯王墓の変遷と諸侯王

第四章 前漢諸侯王墓と諸侯王の自殺

第五章 後漢雒陽城の南宮と北宮の役割について

第六章 後漢皇帝陵の造営

第七章 後漢の謁陵儀礼

 

第二篇 魏晋南北朝期の都城と陵墓

第一章 曹魏西晋の皇帝陵

第二章 東晋南朝の皇帝陵の変遷

第三章 北魏永固陵の造営

第四章 北朝鄴城の復原研究

第五章 北斉の晋陽―鄴との比較を中心に―

第六章 北朝長安の都城史上の位置づけについて

 

第三篇 複都制と宮城の変遷

第一章 中国複都制における洛陽

第二章 魏晋南北朝時代の宮城の変遷―隋大興宮成立の歴史的背景―

第三章 隋の大興、洛陽の二つの宮城

終 章                            

 

初出一覧/あとがき/索引

 

內容提要

 

中国の都城と皇帝陵は、皇帝の生前と死後の居所として造られた。皇帝制度が始まった秦代から、すでにこの二つの建造物の造営は極めて重視されていた。始皇帝が統一帝国の新たな中枢とすべく阿房宮を核として大規模に拡張した咸陽、そして自身の死後の宮殿として築いた驪山である。文字通り空前絶後の規模を誇る巨大建築群の造営は、統一された帝国の経済力と、多量の労働力を徴発し、それを運用する官僚機構があって初めて可能であり、帝国の力を如実に示すものである。ごくありふれた言い方ながら、こうした巨大建造物の造営は、皇帝権力を可視的なものとし、見る者を圧伏する目的を持つ。これらの建造物の造営は以後の中国に継承されるが、王朝毎に姿を変える。建造物に与えられる役割が王朝によって異なるからである。現在に残された都城や陵墓の遺跡の調査成果と、関連史料とをあわせて考察を加え、これらの建造物の造営が各王朝にどのような意味があったのか、いかなる役割を期待されたのかを明らかにするのが本書の目的である。対象とする時代は漢代から魏晋南北朝時代とし、以下の三篇に分けた。

第一篇は漢代を取り扱う。前漢と後漢では儒教との関わりが大きく異なる。前漢が統治体制の範の多くを秦にとったのに対し、後漢は建国の当初から儒教を統治イデオロギーとしており、同じ漢であっても礼制の在り方は大きく異なる。礼制に直結する都城プランと皇帝陵の姿は、王朝中枢への儒教の浸透により大きな変容を遂げたと考えられるのである。そうした違いが両王朝の都城、陵墓にどのように現れ、それが王朝の正統性を如何に表徴していたのか、そして以後の王朝にどのように継承されたのかを検討する。

第二篇は魏晋南北朝期を扱う。分裂期であり、しかも異なる民族による王朝が陸続と生まれたこの時期は、都城や陵墓も数多く造られ、それぞれが特色のある建築として立ち現れた。それらの共通点と、相違点を明らかにすることで、それらを築いた各王朝がどのような体制を目指していたか、何に支配の正統性を求めたのかが明らかにできるのではないだろうか。そうした見通しの下、それぞれの王朝の都城、陵墓に考察を加える。

第三篇は第一、二篇で取り上げた宮城に関しての総括的な論考と、隋代の宮城について論及したもので構成した。個別研究を受けての総合化を試みたものである。

本書で試みたのは、都城、陵墓の遺跡の調査成果を通じて各王朝の王権の在り方、正統性の根拠の差異を明らかにするというものである。中国における遺跡の調査は今後も大いに進展すると思われ、本書の結論も新たな成果を受けて常に検証され続けねばならず、あくまで現時点での素描となる。ただ、各論考では、発掘報告の記述と、現地踏査による観察の結果を組み合わせ、都城と陵墓という研究対象にどのように向き合えるのかを示すことを心掛けたつもりである。諸賢の批正を乞う次第である。


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